鍼灸治療が有効であった繊維筋痛症の1例

富士堂東洋医学研究所・富士堂針灸マッサージ治療院
長森夏弥子

目的

繊維筋痛症は全身広範囲の激しい疼痛などが生じる疾患である。西洋医学では診断基準と治療方法がまだ確立されていない。今回、針灸で繊維筋痛症を1例治療し効果が得られたため報告する。

症例

女性。主訴:首・肩・背中・右腋窩と足首の疼痛。現病歴:4ヶ月前にストレスと冷房により全身の疼痛とうつ症状が現れた。その後、繊維筋痛症外来に受診し繊維筋痛症だと診断された。飲み薬とブロック注射治療で症状の改善が明らかに得られなかったため本院の治療を求めてご来院。
初診症状:背中・右腋窩、首・両肩と右足首は家事や勉強ができないほど痛い。舌は淡暗苔が白、脈弦。
所見:両側後頭部下部・C2・C3・C4棘突起の下・両肩・T5高さの両側・右の右腋窩と右足首の前面の圧痛が陽性。スーパーリングテストとジャクソンテストともに陰性。
西洋医学診断名:繊維筋痛症
中医診断:痺証(風寒湿痺型)
治療:局部夾脊穴と全身的に除風寒湿・通痺止痛の穴に鍼灸(棒灸)治療を最初2ヶ月間週2回、その後週1回行った。
評価方法:疼痛の程度をNRS(0~10)で、日常生活への影響を0~4の五段階法で評価した。

結果

NRSは治療前の10から1年後に5となり、1年半後に1となった。日常生活への影響は治療前に4で1年半後に0となった。

考察

繊維筋痛症発症のメカニズムは完全に解明されていないが遺伝・外部と心理の要因の関与、疼痛原因となる物質サブスタンスPの上昇、疼痛をコントロールするセロトニンの代謝物や前駆体の減少、脳の過剰な活性化などが最近わかってきた。しかし薬物治療に満足しない患者が多く、鍼灸治療を受ける者が少なくない。鍼灸は除風寒湿・活血止痛の作用がある。

結語

今回1例繊維筋痛症に対し夾脊穴と除風寒湿のツボを選択し鍼灸治療を行い、患者の疼痛と日常生活への影響を改善することができた。今後症例を増やし鍼灸治療の効果・予後及びメカニズムなどについて研究したい。

第63回 全日本鍼灸学会 学術大会 愛媛大会より