第21回肥満学会で発表した論文

タイトル:耳穴圧豆治療による減量効果についての研究

【著者】
崔邁:(財)ヘルス・サイエンス・センター中西医結合研究所
山田恒代:東京金属事業健康保険組合
若林孝雄):武蔵台病院内科

肥満研究

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第21回肥満学会プログラム・抄録集
2000 VOL.6 P174

第二回世界中西医結合大会で発表した論文

耳穴圧豆治療による減量とそのメカニズムについての研究

崔邁:(財)ヘルス・サイエンス・センター中・西医結合研究所
山田恒代:東京金属事業健康保険組合
陳堅鷹:遼寧中医大学日本校
若林孝雄:武蔵台病院内科

目的

耳穴圧豆療法(王不留行(小球)と呼ばれる植物を耳穴に貼り付け、刺激による治療方法)を用い、45例の肥満症を対象にして治療を行い、その減量効果、また減量中のエネルギー摂取量及び各栄養素の摂取バランスの変動を検討した。

方法

45例を耳穴圧豆治療のみのA群と耳穴圧豆と食事療法併用のB群に分け、1ヶ月間の治療を行った。2群の間に年齢・BMIの差がなかった。

a.耳穴圧豆治療法:消毒した後、患者の耳穴の脳点、皮質下、内分泌、肝、小腸、心、肺、脾、腎の九穴に王不留行の粒を1個押圧しながら固定する。治療初期は週2回の治療とし、食欲が低下し減量がスムーズに進むようになり次第、週1回の治療とした。

b.食事栄養指導
B群の患者に日本学会による提唱されているように一日エネルギー摂取量を1200kcalとして、食事指導を行った。

c.研究の記録、検定法
体重と体脂肪率は受診時と治療を受けた1ヶ月後に、測定し、体重と身長により体格指数(BMI)を算出した(BMI:22正常で≧25肥満だと診断される)。

d.食事記録の栄養価の計算
患者から、治療前後、それぞれ一日分の献立を書いてもらい、一日平均栄養価を栄養計算プログラム(basic-4:女子栄養大学出版部)により計算した。

結果

1.BMIの変化
BMIはA群受診時、28.80±1.47で、1ヶ月治療の後、27.85±1.44となり、統計的に有意に減少することがみられ、減量値は2.38±0.7kgであった。B群では、治療前には、29.21±1.71で、1ヶ月後には、28.00±1.66となり、統計的にも有意差が認められ,1ヶ月の減量値は3.11±0.85Kgであった。

2.体脂肪率の変化
A群では治療前の36.58±2.04%より、治療後には35.24±5.19%になり、統計的に有意差が見られた。一方、B群では治療前には38.34±3.59%で、1ヶ月後には、36.46±3.44%となり、有意な減少も見られた。

以上、2群の間に有意差はなかった。

3.エネルギー摂取量の変化及び各栄養価の摂取状況
A群では、総エネルギー摂取量は治療後には、治療前より25.33±13.82%有意に減少した。減量中、脂肪対総エネルギーの比率は異常に上がった。また、治療後には、鉄分、特にカルシウムとナイアシンの摂取量は治療前より、下がって需要量より低いことが見られた。
B群では、総エネルギー摂取量は治療後、治療前より37.30±9.47%減少した。減量中、各栄養素摂取のバランスは良好であった。
統計分析によると、A群の患者では、BMIと体脂肪率の減少値はそれらのエネルギー摂取量減少値の間には、正の有意な相関が見られた。

結語

耳穴圧豆療法の患者のエネルギー摂取量を減すことによる減量効果があり、治療中、科学的な食事指導の必要性がある。

第二回世界中西医結合大会論文抄録集

第二回世界中西医結合大会論文抄録集
P428(中文) P181(英文)

中国文、英文はこちら

第56回全日本鍼灸学会学術大会で発表した論文

耳穴圧豆療法と食事療法併用治療の内臓脂肪型肥満に及ぼす影響

長森 夏弥子:(財)ヘルス・サイエンス・センター中西医結合研究所
青山 直善:北里大学医学部循環器内科学

目的

以前、肥満患者を対象に、耳穴圧豆法単独治療(A療法)と耳穴圧豆法+食事療法併用治療(B療法)を施行したところ、両療法とも有意な減量効果を認めたことを報告した。但し、A療法患者の脂肪対総エネルギーの比率が異常に高く、鉄分などの摂取量が需要量以下であったのに対し、B療法患者では栄養素摂取バランスが良好であった。それ故、今回は20症例の内臓脂肪型肥満者を対象にB療法を3ケ月間施行し、どのような効果が生じているかを検討した。

方法

(1)耳穴圧豆治療を2回/週施行し、1200Kcal/日の食事指導を行った。
(2)評価項目は、体格指数(BMI)・体脂肪率・臍周囲径・血清脂質・肝機能および肝エコー所見。
(3)統計:治療前後の測定値はPaired t-test(危険率5%)で比較し、相関分析は単回帰分析を行った。

結果

治療後BMI・体脂肪率・臍周囲径・総コレステロール・中性脂肪・GOT・GPT・γ-GTPが治療前より有意に低下(p<0.05)し、「BMI・体脂肪率」と「臍周囲径」の減少には正の相関を認めた(各々r=0.6 p<0.01、r=0.5 p<0.05)。肝エコーでは脂肪肝の消失、改善を認めた。

考察と結語

B療法は、「BMI・体脂肪率」と「臍周囲径」を低下させ、脂質代謝および脂肪肝を改善した。耳介刺激による減量効果は、食餌性肥満ラットを用いた実験より、脂肪組織でのLeptin生成促進およびLeptin受容体の結合能力を改善し、摂食中枢の抑制、満腹中枢の興奮を誘導することに起因していると言われている。近年、メタポリックシンドローム(MS)が心血管病易発症状態として注目されており、LeptinはMSのアデイポサイトカインのひとつでもある。耳穴圧豆療法と食事療法の併用治療が、MSの動脈硬化性疾患の発症基盤として重要な内臓脂肪を有意に減少させる可能性が示唆された。

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2007年5月第57巻3号 P147